Ⅴ 金属アレルギーの治療法

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適切な治療で症状を改善させましょう

金属アレルギーの症状がすでに現れている場合に必要となる治療は、まず口腔内の金属を排除することだといえます。しかし治療方法にも選択肢があり、一人ひとりの症状や特定されるアレルゲン、またお身体の状態など、さまざまな条件をふまえて決定することが必要です。

歯科金属アレルギーの治療は、接触性皮膚炎の治療と同じようなものであるといえます。接触性皮膚炎の治療では、まずアレルゲンを特定し、それとの接触を避けることで治癒に導いていくという方法がとられます。

しかし原因を特定することなく、症状が現れている部分に漫然とステロイド外用剤を使用するなど、適切な治療が行われていないケースもあるのが事実です。そういった場合は、治癒が難しくなってしまうと考えられます。また、もし歯科金属アレルギーであることを確認せずに治療を進めれば、金属を除去しても症状が改善されないこともあるでしょう。

まずはアレルゲンを調べること。これが、金属アレルギー治療においてとても重要な過程になるといえるのです。

こちらではDr.佐藤が、金属アレルギーの治療法について、また予防についてご紹介します。

まずはパッチテストで診断

カウンセリングしているようなイメージ

金属アレルギーの治療を開始する際には、まず患者さんがどの金属でアレルギー反応を起こすのかを正しく把握することが必要です。これを調べるにはさまざまな方法がありますが、日本の歯科治療では一般的に「パッチテスト」を実施します。

パッチテストとは、皮膚の上に微量の金属試薬を塗布し、その上をばんそうこうで覆って決められた日数をおき、反応が出るかを1種類ずつ調べていく検査です。かゆみが出たり、赤く腫れたりした場合には、その金属がアレルゲン(アレルギーの原因となるもの)であることがわかります。

パッチテストが行える金属の種類(一例)

  • 水銀
  • コバルト
  • クロム3価
  • クロム6価
  • ニッケル
  • パラジウム
  • インジウム
  • 亜鉛
  • スズ
  • 白金
  • イリジウム
  • アルミニウム
  • マンガン ほか

治療方法

金属アレルギーの治療法は一つではありません。一人ひとりの患者さんに適した方法をとり、治療を進めることが大切です。

治療法1:メタルフリー治療(口腔内金属の除去)

まずアレルゲンとなる金属が特定できたら、口腔内の治療に使われている該当する金属を取り除くことが必要です。しかし、口腔内の金属はつめ物やかぶせ物だけでなく、かぶせ物の土台や入れ歯の金具などさまざまであり、そのすべてを取り除くのは容易ではありません。

当院では患者さんの年齢や症状の強さ、また生活への影響などさまざまな面をふまえ、すべてを取り除くのか、また特定の部分を対象にするかなどを判断しています。口腔内の金属をすべて取り除く治療は「メタルフリー治療」として、近年日本でも広まりつつあります。

治療法2:金属摂取の制限・経皮接触の制限

口腔内の金属を取り除いても症状が改善しない場合には、普段の生活の中での金属との接触、または飲食物による金属の摂取が問題になっていることが考えられます。たとえば、コーヒーやチョコレート、濃いお茶などには金属がたくさん含まれており、日ごろから多くとる習慣がある患者さんの場合、これらの摂取を制限したり、原因と考えられる金属との接触を回避したりすることで、症状が改善することもあるのです。

自分の嗜好を見直すこと。これも金属アレルギー治療の大事な一つの過程ともいえるでしょう。

治療法3:薬物療法・キレーション

患者さんの年齢や全身疾患の状態などにより、口腔内金属の除去が難しい場合、体内に取り込まれた金属の排泄を促す薬剤を用いる「キレーション」という治療法をとることがあります。これは、体内の金属を吸着して便や尿とともに排泄させる効果がある「クロモグリク酸ナトリウム」や「金属キレート剤」という薬剤を用いるものです。

クロモグリク酸ナトリウム
(インタール:DSCG)
金属キレート剤
(アンタビュース:ジスルフィラム)

気管支喘息の吸入薬にも使われているDSCG(クロモグリク酸ナトリウム)は安全性が高く、アレルゲンの吸収を抑制できる薬です。金属アレルギーは食事制限による治療も行われますが、それでも効果がでないときにDSCG内服薬を使うケースがあります。歯科金属によるアレルギーの場合は、食事中と就寝中に金属が溶け出しやすいため、毎食30分前に加えて就寝前に服用します。

ジスルフィラムは、体内に取り込まれた金属を排出する金属キレート剤です。服用後は一時的に血液中の金属濃度が上昇しますが、その後に尿として対外に排出されるため金属アレルギー治療に対して有効だと考えられています。しかし、服用した症例の半数以上に嘔吐や腎障害などがみられたので、十分に検討してから使用する必要があります。

テトラサクリン系の薬剤も実験段階ではありますが、金属アレルギーの原因を体外に排出できると考えられています。金属制限食とミノサイクリン塩酸塩も金属アレルギーに対して効果があると考えられていますが、今のところ有効性は検証されていません。

キレーションは、一部のエステティックサロンやデトックスサロンなどで行われていることもあります。しかしキレート剤にはいくつかの種類があり、中には副作用が強いものや取り扱いに注意が必要なものもあるため、注意が必要だといえるでしょう。

なお花粉症などにおいて行われる、患者さんにアレルゲンを少量ずつ投与し続けていく「脱感作・減感作療法」は、金属アレルギーについては不向きだといえます。

金属アレルギーを予防するには

金属アレルギーについて確実な予防法というものはありませんが、日常生活において以下のことに注意すれば、リスクを低減することができます。

  • ネックレスなどの金属製品でかぶれた経験がある場合には、できるだけ金属を身につけないでください。
  • むし歯治療においては、初期であれば金属を使用しないこともできます。もしすすめられても、できるかぎり入れないようにしましょう。
  • 口腔内が汚れていると、金属は溶けやすくなります。まめにブラッシングし、きれいな状態を保ちましょう。
  • 喫煙習慣や慢性扁桃炎のある方は、うがいや禁煙も効果的です。

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