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Dr.佐藤からのメッセージ
Dr.佐藤から患者様へのメッセージをご紹介します。金属アレルギーが増加した背景、金属アレルギーと歯科材料との関係性、金属アレルギーの治療法や当院での考えなどをご覧ください。
化学物質が溢れる現代社会
私たちの生活は、一昔前とは比べものにならないほど便利になりました。それにともなって増えたのが化学物質です。自動車や工場から出る排気ガスや硫黄酸化物、ばい煙、粉じんが充満した都会の空気、水質汚染を防ぐために大量の消毒液を加えた水道水――。
そして化学物質は食べ物の中にも含まれています。手軽に食べられるファーストフードやファミリーレストランのレトルト料理、店頭にたくさん並べられたコンビニエンスストアのお弁当、スーパーマーケットに陳列された肉や野菜などには、長持ちさせるための保存料であったり、見た目をきれいにするための発色剤や着色料であったり、味を調整する化学調味料などがたくさん入っているのです。
昔は不便なこともたくさんありましたが空気もきれいでしたし、自然の中で育った食べ物はとても安全でした。現在は、深夜でもコンビニに行けば何でも買える時代です。とても便利になった反面、生活と化学物質は切り離せない関係になっています。
増え続ける金属アレルギー患者
現代は化学物質に触れ、口に入ってしまう機会が増えています。昔なら取りこまれることが少なかった化学物質が体内に取り込まれるとどうなるのでしょうか?
多少の化学物質なら問題ありませんが、長期間に渡って蓄積されていくと免疫機能に異常が現れます。本来はウイルスや細菌などが体内に侵入するのを防ぐ、とても重要な免疫機能。その免疫反応が狂ってしまうと、もともと反応しなかった花粉やハウスダスト、ダニの死骸などに反応してしまうようになります。これらは、私たちのまわりにたくさん存在する無害なものです。それらに過剰に反応し、花粉症や喘息、じんましんやアトピー性皮膚炎になってしまうのがアレルギー反応です。症状としては肌や目がかゆくて耐えられない、くしゃみや涙がとまらないなどが挙げられます。そして金属によって反応が出ると、それを金属アレルギーと呼びます。
歯科治療で起こる可能性のある金属アレルギー
近年、金属に対してアレルギー反応を起こす患者様が増えています。そして、残念なことに歯科治療が金属アレルギーの引き金になっている可能性があるのです。虫歯などをはじめとした歯科治療では、削った歯を補うために金属製のつめ物やかぶせ物を使います。それらの素材は強度を高め、長期間にわたって使えるように複数の金属を組み合わせた合金が一般的に使用されています。歯科材料として使われる金属は、身のまわりにある金属に比べて強度や腐食まで考慮されたものなのです。
しかし、口腔内はプラークや歯石、細菌が出す酸、だ液など、非常に過酷な環境です。いくら強度や耐久性を高めた合金であっても腐食が発生してしまいます。また、食事などでかぶせ物同士が接触すれば擦り減ることもあるでしょう。そして歯科金属が腐食すると金属イオンが溶け出します。この金属イオンが体内に少しずつ蓄積され、たんぱく質と結合すると金属アレルギーを起こす原因「アレルギー誘発物質(アレルゲン)」になることがあります。
蔓延している安易な歯科治療
ここで誤解がないようにご説明しておきますが、かぶせ物をはじめ、歯科治療で使われる金属が必ずしも悪いわけではありません。そもそも身のまわりにはアクセサリーや時計、電化製品やパソコンなどの金属製品が溢れています。さらに豆やココナッツといった食品には多くの金属成分が含まれ、チョコレートにもスズやニッケルが入っているのです。
さらにいえば、私たちの身体を構成している物質にも金属は多く、金属なくして生命を維持することは不可能です。鉄が不足すれば貧血になりますし、亜鉛が不足すれば唇が切れたり、口内炎になったりします。鉄や亜鉛などのサプリを利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
最近は金属アレルギーがテレビや雑誌などで取り上げられることも増え、金属を使わない歯科治療(メタルフリー治療)に注目が集まっています。しかし、歯科金属は何十年も使い続けられてきた歴史のある治療法ですし、単純に金属を取ればいいかといわれるとそうではありません。重要なのは検査を行い、アレルギーの原因を特定することです。まったく検査もせずに、「ただ悪いから」という理由で金属を取り外すようなメタルフリー治療には根拠もなく、そのような歯科治療には注意が必要です。
「金属=悪い」というイメージがありますが、それは間違った考えです。メタルフリー治療が一番いいというわけではなく、症状や患者様に合わせた治療を行うことが最も重要です。
金属アレルギー治療
検査の結果、金属アレルギーと診断されれば治療が必要です。最初にアレルギーを引き起こしている金属と触れる機会を少なくする、その金属が含まれているものをできるだけ食べないようにするといった私生活指導からスタートします。
そのうえで、原因となる金属の除去を行います。原因がかぶせ物などの歯科金属だった場合は、それを取り外してアレルギー反応が起こらない材質に変更します。かぶせ物が少なければ治療はすぐに終わりますが、多ければ治療期間は長くなってしまいます。その際に患者様の年齢や症状の強さ、咬み合わせの問題など、日常生活に影響が出ないように治療を進めますのでご安心ください。
生活指導や歯科治療でも改善がみられない、または十分ではないと判断した場合、薬物療法を行うケースもあります。薬を服用することでアレルギーを起こしている原因物質の吸収を抑えたり、排出されやすくしたりして症状の改善を目指します。ただし、金属を根本的に除去するわけではなく、有効性が疑問視されていることもご理解ください。服用には主治医とよくご相談してからとなります。
金属アレルギー治療のためのメタルフリー治療
金属アレルギーの恐れがあるからといって、すべての歯科金属を取り外すことが最良の方法だとは思っていません。まずはアレルギーの原因となる金属を特定し、検査結果から根拠に基づいた治療を行っていくことが重要です。
最近では、金属をまったく使わないメタルフリー治療というものがあります。文字通り金属を使わない治療なので、金属アレルギーのある患者様には有効です。銀歯などの金属からレジン系材料(プラスチック)やセラミック(陶材)、ハイブリッドセラミック(超硬質レジン)に交換することで、金属アレルギーの改善が望めるでしょう。
ただし、絶対に金属アレルギーがなくなるわけではないことをご理解ください。かぶせ物やつめ物を取り付ける接着剤には、微量ですが金属も含まれています。また、レジン系材料にアレルギー反応が出る方もいらっしゃいます。そこで当院では、安全であなたに最適な材料選択をしています。
健康、審美健康を考えたメタルフリー治療
メタルフリー治療は金属アレルギー治療以外にも有効です。まず1つ目は、金属アレルギーを発症するリスクを抑えられることです。金属アレルギーの症状が現在出ていない方でも、将来的にアレルギーを発症する恐れがあります。その予防としてメタルフリー治療を行うことがあります。また、セラミックは汚れが付着しにくいので、衛生面やメインテナンス面でも効果的です。
2つ目は審美的な治療です。金属に比べ、セラミックは天然の歯に近い色調や透明感を再現可能です。セラミックを使ったメタルフリー治療であれば、きれいで身体にやさしい、機能と健康の両面から考えて理想的な歯科治療ができます。
ただし、金属は身体に悪いからメタルフリー治療という考えは、治療の選択肢をせまくしてしまう可能性があるのでおすすめしません。これまでにかかった病気、またお悩みや心配ごとなどをしっかり医師に伝えたうえで、金属やメタルフリーを選ぶことがとても大切です。
皮膚科と歯科との連携治療
歯科材料が金属アレルギーの原因だった場合、皮膚科での治療だけでは改善しないこともあります。金属アレルギーは、まだまだ一般的に認知されている病気とはいえません。そのため、患者様はテレビやインターネットで得た知識から、「金属アレルギーではないか・・・」と心配になって皮膚科や歯科を受診されることが多いようです。
しかし、恥ずかしい話ですが、金属アレルギーに対して正しい知識や治療法を理解している歯科医師はほとんどいないのが現状です。一方で皮膚科医も歯科材料との関連性についての知識や経験が不足している場合があります。
そこで重要なのが皮膚科と歯科が連携した治療です。当院では、皮膚科と連携しながら金属アレルギーの治療に取り組んでいます。もちろん、すでに皮膚科に通われている方は、主治医からの紹介状も受け付けておりますし、こちらから皮膚科への紹介状を書かせていただくこともできますので、ご安心ください。
金属アレルギーの患者様へ
金属アレルギーの治療は、すぐに成果がでることもありますが、多くの場合は治療開始から成果が出るまで速くて2~3ヶ月ほどかかります。長い方だと1~2年、中には改善まで8年もかかったというケースもあります。長い年月をかけて体内に蓄積された金属アレルギー物質を排出するには時間があかります。そのため、年単位での治療期間を要することも少なくありません。
一度でも金属アレルギー反応が起き、もし原因が歯科材料だった場合はお口の中から金属を取り除くしか方法はありません。そして、これまでの歯科治療で多くの金属を使っている場合は、さらに治療は困難を極めます。非常な厄介な治療であり、なかなかよくならないときには患者様も当然あせられると思います。しかし、そこはお互いの信頼関係をしっかりもって、辛抱強く治療していくしかないのです。